労務ぷらんコラム

「障害者雇用代行ビジネス」なるものがあるとは!

2023.01.18

神戸の社労士:井上です。


さて、気になる記事を見つけましたよ。皆さんは聞きましたか?


「障害者雇用代行ビジネス」なるものがあるとは!


静岡新聞の記事を基にご説明いたします。

障害者雇用代行ビジネス 「働く場創出」に賛否 大半が休憩時間との証言も【表層深層】|あなたの静岡新聞 (at-s.com)



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近年、各地に広がる貸農園での障害者雇用「代行」ビジネス。

実施事業者は「障害者の働く場を創出」とうたい、企業は法定雇用率を達成できるというメリットがある。

一方、企業の拠点とは離れた農園に障害者が集められ、実際に働いた人からは「一日の大半が休憩時間だった」との証言も。農作業は本業とは関係なく、作物も販売しないという手法には「ビジネス事業者にお金を払い、雇用率を買うようなもの」と疑問が投げかけられている。

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(引用ここまで)


雇用率とは何かというと、ここでは「障害者雇用率」のことです。

民間企業は、2.3%というノルマがあります。

平たく言うと、「43.5人以上雇用している企業は、障害者を一人以上雇い、社会貢献しなさい」ということです。


この割合を達成できない場合は、ペナルティーとして、100人超えの企業は月額50,000円を支払い、達成した企業には、月額27,000円の障害者雇用調整金が支払われます。


なので、月額にして差額が77,000円あります。

(100人以下の企業は、ペナルティーはありませんが、達成した場合、障害者雇用報奨金があります。詳しくは、障害者雇用納付金制度の概要|独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 (jeed.go.jp)を見てください) 



ここまで聞けば、障害者を一定額で、用意してくれたら、とか考える人がいる訳です。


新聞記事は、障害者の意見を紹介しております。

どうやら賛否があるようです。

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 「仕事はとにかく楽だった」。6年ほど前、エス社の農園で働いたことがある千葉県内の50代男性は振り返る。発達障害があり、エス社の募集広告を見て応募。雇用元はエス社に決められ、都内の機械メーカーだった。
水やりや収穫などの仕事はすぐに終わってしまい、大半が休憩時間だったという。自身への月給約11万円とは別に、企業が人材紹介料や農園利用料としてエス社に数百万円以上を支払っていることを後に知り「イメージアップのために雇用率をお金で買っていると言われても否定できないのでは」と話す。


一方、知的障害のある子どもの親からは「障害年金だけでは生活できない。良い話だと思う」との声もあり、評価は分かれる。エス社に批判への見解を尋ねたが「取材はお断りする」との回答だった。


障害者雇用に詳しい慶応大の中島隆信教授は「本来は企業の本業に貢献する形での雇用が望ましく、あるべき姿とは言えない。いくら正当化しても、結局は法定雇用率のクリアが目的であることは明らかだ」と指摘。
 

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(引用ここまで)


意見は様々ですが、最後の中島教授の言葉の通りで、「制度の趣旨に反する」と言われても仕方がない。

ただ、ここ数年で障害者雇用率を、一気に引きあげてきたツケだとも感じられる。


昔は、障害者雇用と言えば「50人に1人(障害者雇用率1.6%)」というイメージだったが、平成25年に障害者雇用率を2.0%、平成30年に2.2%、令和3年に2.3%(43.5人に1人)と引き上げてきた。

そこに新たなビジネスチャンスを生んだのは、政府の急激な雇用率引き上げにも、問題があるのではないだろうか。



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