労務ぷらんコラム
とある社労士の就業規則コラムSS 9(採用の自由)
神戸の就業規則社労士の井上です!
昔、厚生労働大臣が岩波書店に「縁故で採用し、職業選択の自由の権利を奪っている」とし、
調査したことがありました。
労働新聞にも「大臣は何を言っているのかわからない」と記事になりましたが、
何故かというと?
そもそも、企業には「採用の自由」が保障されています。
例えば、体力を使う業務には、体力のある人を採用したいわけじゃないですか!?
体力のある人と無い人が、採用試験に来たら、体力のある人を採用するのは、当然と言えます。
そこで、健康な人を募集とし、健康状態を採用試験時に調査するのは合法でしょうか?違法でしょうか?
採用を労働力の提供を受ける以上、応募者の健康状態は会社側にとって重大な関心ごとです。
健康状態や通院歴を尋ねることはプライバシーの観点から気が引けることもあります。
しかし、そもそも会社は「健康に働けること」を前提にして雇い入れ時の賃金を設定しているはずですから、
本来は会社が「健康な人を雇う」という条件を付することには何ら問題ないはずです。
例えば、日本との寒暖差が激しい海外での勤務が想定される場合には、
それなりの体力と健康状態が求められるでしょうし、
車を運転する業務であれば、てんかんなどの発作を発症する病気を持っている場合は
勤務にふさわしいとは言えないでしょう。
つまり、自社で求める働き方にふさわしい健康状態であるか否かは選考の際に確認しても
原則としては問題になりません。
ただし、メンタル面での病歴については慎重な聞き方をする必要があります。
健康診断結果だけではメンタル面の不調は必ずしもわかりませんので、
「過去○年間に通院したことがありますか?ある場合は疾病名を記入してください」など
補助的な確認書類の提出を求めて、精神疾患も含めた過去の病歴を確認してはいかがでしょうか。
ちなみに、職業安定法第5条4では、
「社員を募集するにあたって、業務の目的の達成に必要な範囲内で個人情報を収集することができる」と
定めてあり、健康状態も必要な情報一部と解されます。
また、個人情報保護法は、収集した個人情報を「どのように管理するか」を制限する法律ですので、
情報を収集する行為に対する制約をつけるものではありません。
就職差別にならないように気を付けつつ、会社が求める健康状態に適う人材採用をしましょう。
企業は人なり!
労務プランニング オフィスINOUE