労務ぷらんコラム
とある社労士の就業規則コラムSS 10(引継いでから辞めなさい)
神戸の就業規則社労士の井上です。
退職する前には、引継いでから辞め欲しいのですが、
その際、気になる点を挙げておきました。
【引き継ぎ不足を理由とした退職金不支給は難しい】
退職金制度がある会社において退職金を支払わないためには、
まず退職金規定に「○○という場合には不支給にするとの明示」があることが前提となります。
そのうえで、退職金を不支給とする場合には、「会社に重大な不利益を及ぼす行為があった」と認められなければなりません。
今回のように「十分な引継ぎをしなかった」ことは、会社に重大な不利益を及ぼす行為
とまでは認められない為、不支給は無効となると思われます。
【減額は可能だが、その程度には制限がある】
退職金の減額は規定として定めておけば可能です。
しかし、十分な引継ぎをしたかどうかは会社と社員で解釈が異なるため、
判断が難しく、減額できたとしても10%程度までしか認められないでしょう。
【引き継ぎ期間】
期間の定めのない契約は、民法上原則として退職を申し出てから14日以上経過すれば
退職が成立します。ということは、「退職申し出から14日後に退職されてしまうこと」を想定して、
14日で引継ぎが完了するような引き継ぎマニュアルを整備しておく必要があるでしょう。
【退職前に有給休暇を消化したいと言われたら拒否は難しい】
一般常識的には1ヶ月から数か月の引き継ぎ期間を設けて引き継ぐべきでしょうが、
感情的な対立などにより退職する場合にはうまく引継ぎができない場合も出てきます。
例えば14日間の間に有給を取得したいと申し出があれば、会社側が拒否することは難しいでしょう。
退職日まで無断欠勤した場合は、規定の定めがあれば退職金の減額を行うことが
可能な場合もありあますが、引継ぎは行ってもらえません。
特定の社員にしか行えない作業が多い場合、引継ぎの量も多くなり、
引継ぎが行えなかった場合の影響も大きくなります。
代替要員でも作業が滞らないような業務体系を作っておくことが大切ですね。
労務プランニング オフィスINOUE