労務ぷらんコラム
【就業規則】記事一覧
- 2012.06.26
- 「雇用契約書」が大切な本当の理由②
- 2012.06.15
- 「雇用契約書」が大切な本当の理由①
「雇用契約書」が大切な本当の理由②
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「雇用契約書」が大切な本当の理由②
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神戸の社労士:井上です
労使間で締結する雇用契約書には法令上の決まりがあり、
またトラブル回避のためにリスクポイントを押さえた内容にする必要があります。
本稿では、前号に引き続きQ&A方式で重要な点をご説明します。
【Q1】雇用契約書には、どんな項目を記載すればよいでしょうか。
【A1】雇用契約書(労働条件通知書)には、「絶対に書かなければならないこと」と
「決まりがあるなら明示しなければならないこと」があります。
<絶対に書かなければならないこと>
(絶対的明示事項)
雇用契約期間・更新の有無、更新の判断基準
就業場所、転勤の可能性の有無、従事する職種
始業および就業の時刻、休憩時間、休日、休暇
所定時間を超える労働の有無
交代制について(交代制がある場合)
賃金額、計算及び支払方法、賃金締日支払日
昇給について ※1
定年・継続雇用等
退職について(解雇の事由を含む)
※1 昇給については、口頭で明示してもよい。
<決まりがあるなら明示しなければならないこと>
(相対的明示事項)※2
退職金、賞与その他臨時に支払われる賃金
労働者に負担させる食費や作業用品
安全及び衛生に関する事項
職業訓練に関する事項
災害補償及び業務外の傷病補助に関する事項
表彰及び制裁に関する事項
休職に関する事項
※2相対的明示事項は、口頭で明示してもよい。
企業の雇用契約書について、
これらの項目がもれなく記載されているかを確認してみて下さい。
【Q2】今まで雇用契約書を取り交わしていなかったのですが、
今後パートも含め全員分の雇用契約書を整備したいと考えています。
入社後相当年数経過している従業員との雇用契約締結は、どのように進めればよいでしょうか。
【A2】入社後相当年数経過した従業員との雇用契約については、
例えば「新事業年度」「新年」「組織変更等の日」など
切りのよいタイミングでの一斉整備をご検討ください。
既存の従業員の中には、入社から何度も賃金など労働条件が変わっている方も
いらっしゃると思いますので、入社時に遡って雇用契約を締結することが困難です。
そのような場合は、従業員の納得性が高い日付から
「改めて今後の労働条件はこうです」と雇用契約を結ぶと良いでしょう。
ただし、企業規模や既存社員の方の勤続年数によっては、
「なぜ今さら雇用契約書を結ぶのか」といった警戒・反発・不審を招く可能性もありますので、
雇用契約書整備は慎重に進める必要があります。
また、雇用契約書は、就業規則との整合性についても注意しなければなりません。
雇用契約書と就業規則との間にズレや矛盾はないか、併せて検討していくことが必要です。
雇用契約書についてのご不明点は、お気軽に当事務所までお尋ね下さい。
「雇用契約書」が大切な本当の理由①
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「雇用契約書」が大切な本当の理由①
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先日、雇用契約書を渡していない、会社を見つけました。
社長・従業員曰「今まで、これで問題がなかったから」これで良いそうです。
さて、本稿では雇用契約書についてよく寄せられるご質問をQ&A方式で紹介していきます。
【Q1】雇用契約書を特に取り交わしていませんが、大丈夫ですか?
【A1】雇用契約書は、法律的見地、及び労使トラブル回避のため作成するべきです
<律的見地>
雇用契約≒労働契約は、労使当事者間の合意のみによって成立する契約であり、
口頭での約束でも成立しますが、労働基準法上「賃金、労働時間その他の労働条件を
明示しなければならない(労基法第15条1項)」とあります。
特に「契約期間」「就業場所」「賃金」「退職」などの
重要事項は書面により明示するよう定められています。
労働諸条件について合意があったことを記録する意味でも、
労使双方の捺印等のある雇用契約書を取り交わしたほうが望ましいと言えます。
<労使トラブル回避>
契約期間や契約更新の有無、転勤可能性、解雇に関する事項や賃金、
固定残業代などの「トラブルになりやすい事柄」について、契約締結時に合意がなされた
という書面を取り交わしておくことで、のちの労使トラブルを回避・軽減することができます。
【Q2】雇用契約書がない(あるいは整備不十分)ことで、具体的にどんなトラブルがあるのでしょうか?
【A2】「契約期間、契約更新」「転勤」「退職・解雇」「賃金・賞与・ 残業代」が挙げられます
<詳細説明・トラブル例>
《契約期間・契約更新》
働きの悪い社員を契約期間満了として取り扱いたいが、自動更新状態であったり、
契約更新の判断基準について決めていなかったためできなかった
《転勤》
転勤を社員に命令したが拒否され、雇用契約書上で転勤の可能性の記載がなかったためできなかった
退職・解雇 定年について明記しておらず、就業規則もない会社において、慣例により60歳定年を申し渡したが、労働者が継続雇用を申し出て、労使関係が悪化した
賃金・賞与・残業代 賞与について「就業規則による」と定めており、当該就業規則で「経営状態悪化時の賞与減額または不支給」について定めておらず、賞与の減額ができなかった
雇用契約書には上記のようなトラブルの種があるため、企業側は特に注意してその作成をすすめる必要があります。